宗教や心のこと

宗教や心について、考えたこと

仏も死んだ?

米国人でワイルダーペンフィールド(1891-1976)という学者が居ました。元々は「てんかん」を専門とする脳外科医です。

彼は治療のため、てんかん患者の頭蓋骨を大きく切開して脳を露出させ、電気刺激によりてんかんの焦点部(発作の起点部位)を発見してそこを切除するという手術を、1940年代までに400例以上実施しています。

手術にあたっては、焦点部のあたり一帯を電気刺激し、大きな脳機能障害が出ないかを確かめた上で行うので、多くの症例に対応するうちに、大脳のどの部位がどんな機能を担っているのかが、明らかになりました。

こういう絵を一度は見たことがあるのではないでしょうか。

 

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脳そのものには痛点が無く、手術は患者が覚醒した状態で行われます。脳を直接電気刺激しつつ、患者に「ここはどうですか?」と質問していくのですが、中には興味深い回答が返ってくるポイントがあります。

①忘れていた遠い昔の記憶が一瞬で次々と蘇るポイント。
②神仏や神々しい存在と出会った気持ちになるポイント。
③自分がここに居ない気持ちになるポイント。
④この世のものとは思えないほどの美しい音楽を聴いた気持になるポイント。

などで、複数の患者で確認されているそうです。


実際に自分で確かめたわけではないので鵜呑みにはしませんが、私はこれらは十分にありえることだと思います。

①は、墜落等で死を覚悟し生還した人などがしばしば口にするものです。

②は、知人が昔、黒田清子さんに間近で接する機会があったとき、「普段TVではあんまりパッとしないのに、間近で接するとオーラ(?)がもの凄くて、思わず平伏しそうになった」と語ってましたが、②のポイントが活性化されたのかもしれません。

また臨済禅では、ある程度悟りの段階が深まってくると瞑想中に神仏が出てくるから、その神仏(=偽物です)を槍で突き殺せと教えられますが、②との関連がありそうです。

③は、「幽体離脱」といわれる「心理現象」の元になっていたりするのでしょう。オカルトと決めつけて思考停止するのは良くないと思います。それと③は、俗にいう「天にも昇る気持ち」とも関連があるのかもしれません。

④ですが、人類は「旋律」だけは皆同じ部分を好み、感動します。モーツァルトの旋律は洋の東西を問わず好まれるし、日本の童謡かと思っていたら元々西洋の民謡だったりします。名曲の名曲たるゆえんは「1/fゆらぎ」と関係があるとも云われていますが、モーツァルトの旋律にも多く入っているとか。④は「1/fゆらぎ」の解析部位なのかもしれません。


こうやって見てくると、宗教とは「人間が進化により得た脳の特性が生み出したもの」とも言えるようです。

ニーチェが「神は死んだ」と言ってから随分経ちますが、このような「唯脳論」に立脚すると「仏も死んだ」になります。しかし、なぜ人間の脳がそのように進化したのかを考えるとき、「偶然」で片づけてはならないものがある気がして仕方がありません。