宗教や心のこと

宗教や心について、考えたこと

私が仏教徒でない理由

私がちょくちょく読ませてもらっているサイトで、米国人が書いた仏教に関する書籍を動画で紹介していました。

 

書籍のタイトルは「Why I Am Not a Buddhist」で、直訳すると「私が仏教徒でない理由」。著者はEvan Thompson という人です。

 

Evanの父は1973年、ニューヨーク州Lindisfarne Association という、宗教者・哲学者・科学者・探究者などが集まって共同生活を送り、より良い社会を作る研究をするコミュニティーを設立しており、Evanはそこでhome-schooled(自分の家での教育)を受けて育っています。

 

宗教者、哲学者、科学者、探究者に囲まれたコミュニティーで自家教育で育つというのは、かなり異質な感じがしますが、いまだにアーミッシュが20万人以上居ると言われる土地柄なので、北米ではそこまで奇異というわけでもないのかもしれません。日本にもヤマギシ会(宗教ではないが、理念は宗教的)がありますが、今は1500人ほどだそうです。こちらの方は昔から何かと物議を醸している団体さんです。

 

さて Lindisfarne Association で育ったEvanですが、8歳にして父から渡された釈尊の伝記を読んでいたく感銘を受けたそうです。そして16歳で大学に入学、アジア哲学と西洋哲学を学び、最初に書いた論文が、京都大学西谷啓治氏と有名な哲学者のハイデガーについてのものだったとのこと。

 

Evanは博士課程を終えた後、認知科学(脳の働きをfMRIなどの装置を使って可視化したり、生理計測や計算機シミュレーションを援用したりして、知的な仕組みがどのように働くのかを探る学問)を学び、その後 Mind and Life Institute( 科学と瞑想状態の関わりを探究して人間の精神活動をより深く理解し、世界に前向きな変革をもたらそうと研究する機関 )で働くようになります。


そのEvanが2020年に米国で出版したのが先に挙げた「Why I Am Not a Buddhist」であり、私がちょくちょく読ませてもらっているサイトでは、

・仏教瞑想を実践している人

・瞑想、科学、宗教、哲学に関心が高い人

・仏教の書籍や法話などを積極的に取り入れている人

に対してお奨めしています。

 

興味惹かれる内容のようなのですが、出版後1年経っても邦訳は出ていません。米国で出版されたものや電子書籍はアマゾンで買えるのでそれも選択肢ですが、宗教・哲学・科学の用語を含めたある程度の英語力がないと骨が折れると思います。サイトの管理人さんたちが、動画で日本語で解説しているので、そちらの方が簡便でしょう。(但しある程度は色眼鏡を通したものになります)


この「Why I Am Not a Buddhist」、タイトル通り仏教を一部否定するものです。それにも拘らず動画をいくつも作って解説するのは、このサイトの管理人たるお坊さんたちの所属が曹洞宗禅宗の一つ)であることも大きいと思います。

 

昔、臨済宗禅宗の一つ)の松原泰道さんが、ニューエイジの天下伺朗さんと対談して、「世の中がこれほど変化しているのに、日本の仏教界は旧態依然として大昔に祖師(=開祖)の言ったことを出してきて語るのみ。レンジでチンする仏教ではいかんと思うのです。」という旨を語っていたのを思い出します。

 

公案を使う臨済宗と、ひたすら坐禅を組む曹洞宗という違いはありますが、不立文字・教外別伝を掲げ、証明が出来ない輪廻や業などの形而上のことには関心を持たず瞑想する禅宗は、科学との相性が良いのです。

 

ちなみに「Why I Am Not a Buddhist」の解説動画本編は有料になっています。(10回あり。各1時間程度。各百円) 無料公開すると著作権などの絡みで色々と面倒なことが起こるようです。浄土真宗を称するS会のネット通信講座(初級、中級、上級あり)だと中級コースで17万円(入会金を含む)するので、えらい違いです。