合格発表を見た後で

随分と昔、大学の合格発表を見に行きました。当時はインターネットが普及していなかったので、大学の構内へ直接見に行かねばなりませんでした。

合格しているのを確認し帰ろうとすると、いろいろな人に呼び止められました。サークル勧誘というやつです。キャンパスの一角には何やら拡声器を持って注意喚起している人たちも居て、「原理研に気をつけろ！」と繰り返し言っていました。中核派は知っていたので、拡声器を持って呼び掛けているなら彼らか？と思いました。

原理研とは、芸能人の洗脳騒動や合同結婚式、それに霊感商法で有名になった統一教会の学生組織です。当時すでに各地の大学で新入学生を狙った宗教団体の勧誘が活発に行われており、引き込まれてマインドコントロールを受けてしまう事例が多発していたのを知ったのは随分後のことで、今でこそ各大学で新興宗教に対する注意喚起を入学前の早い段階でやってくれますが、当時の大学は積極的には何もせず、野放しといって良い状態でした。

で、その原理研に呼び止められましたが、「別のサークルに入ったので」と嘘をついてやり過ごしました。やれやれと思って歩いていると、今度は仏教系の団体さんに捉まりました。急いでいるのでと言って去ろうとしましたが非常にしつこく、まあ５分だけ話を聞いて行ってよとどこまでも食い下がります。

ここでも「別のサークルに入ったので」と最初に言っておけばそのうち諦めてくれたかもしれませんが、仏教系の団体さんの次から次へのトークに押されてしまい、言い出すタイミングを逸してしまいました。それでも振り切って帰れば良かったのですが、宗教やスピリチュアルに親和性がある私なので、まあ少しなら聞いてみようかという気になりました。

その辺で話を聞くのかなと思っていると、かなり遠い建物の一室に連れて行かれました。大学構内を出たように思います。建物の一室に入り椅子に座るように促され、しばらくすると数人の「先輩」たちが現れて私を囲み、勧誘開始です。そこからが長かった。

「先輩」たちの話は、よく理解できませんでした。段々と馬鹿馬鹿しくなって帰りたくなり、その旨言いましたがまあまあもう少し聞いてよと食い下がります。そのうち名前と電話番号を書いてくれたら、（このまま帰っても）いいよと言うので、架空の名前と架空の電話番号を書いてその場を去りました。最初に声を掛けられてから３０分ほど経っていました。

実はこの時に声を掛けてきたのは、当ブログに度々登場する「浄土真宗を称するＳ会」だったようです。話の内容は理解できなかったので覚えていませんが、後で知ることとなったＳ会の偽装勧誘の手口と全く同じで、当時そのような偽装勧誘をしていた仏教系団体はＳ会くらいのようだからです。

この時すでに「ご縁」があったわけですが、これは単にＳ会が大学での新入生の偽装勧誘を当時盛んに行っていた（同級生も口々に勧誘されたと言っていた）ということと、私が宗教的素養を持ち中年になってあれこれ首を突っ込んでいたので、「ご縁があったように見えた」というだけのことです。

それで、架空の名前や電話番号を書かず、馬鹿正直に本名と実際の電話番号を書いていたらどうなっていたでしょうか？Ｓ会の被害者家族の会のＨＰや、Ｓ会脱会者のブログなどを見ると、しつこく電話が掛かってきて、取り込まれていった人も少なくなかったようです。入会してしまっていたら、私もそのうちマインドコントロールに掛かって偽装勧誘する側に回り、多くの人を不幸にしていたのかもしれません。